亜美は内気だから、拓斗のことが好き、とはいえなかった。みんなが茶化しても素直な気持ちが伝えられなかった。
 
 そのまま時は過ぎ、バレンタインがやってきた。いつ渡そうか、ずっと迷っていたら帰りの時間になってしまった。

 「チョコ、余っちゃった…」

 「ちょうだい。」

 嘘かと思った。照れながら、目も会わせずに拓斗は確かにそういった。

 「え…あ、うん。はい。」

 「ありがと。」

 亜美も自然に笑った。嬉しかった。