「やったー!ようやく家に帰れる〜!」
学校のHRが終わりガチャガチャと音をたて、一斉に帰る準備を始めるクラスメイト。そんなみんなを私は横目でちらりと見て深いため息をついた。
「帰る…か…。」
私はストラップがジャラジャラついたスクールバッグに弁当箱とメイクセットだけを詰め帰る準備を始める。
南城静香。これが私の名前女の子らしく清楚で静かな美しい女性に育ってほしいという願いが静香という名前には込められているらしい。でも高2になる今の私は静香なんて名前に合わないほど真逆な人間になってしまった。
髪の毛は茶髪に近い金髪、耳たぶにはピアス、スカートの丈は膝上が当たり前。
茶色のカラコンをつけ、ビューラーでまつ毛を上げマスカラを塗る。唇にはピンク色のグロスを塗り、頬にチークを塗って毎日学校に通っている。最初は口うるさかった教師ももう諦めたようで何も言ってこない。
10年前の私は黒髪のストレート、白い肌に大人しく真面目なキャラだった。先生に怒られることは一回もなく成績表の先生からのメッセージには「おしとやかで真面目な子」と書かれたぐらいだ。
そんな私がこんな風にグレてしまったのには理由がある。
6年前、ママとパパが離婚して私はママに引き取られた。シングルマザーとして一人娘の私のことを何不自由なく大切に育ててくれた。たくさん喧嘩もしたけど私はママのことが大好きだった。
でもそんな時間は長く続かず、ママは喉の甲状腺という部分が病気になった。病気の原因は疲労によるものだったらしい。私のことを育てるため朝早くから仕事に出かけ夜遅くに帰ってくるママ。中学生だった私がバイトできる訳もなく収入源はママに頼りっぱなしだった。