その後、タイミングよく先生が入ってきて、授業が始まった。



「え~、ここはさっきの式を代入して~…」



つまんない。



数学なんて一通り教科書見ればわかるでしょ~、なんて思って頬杖をついていると、隣から声がした。



「今日の茉理機嫌悪いな~。なんかあったか?」



麻生正輝。



綺麗にセットされた茶髪にピアス、それに上手い具合に着崩した制服。



私の知り合いの中でも一、二を争うほどのイケメンで、モテ男。



よく遊んだりする男友達の一人。



「別に機嫌悪いわけじゃないけど。」



ぼーっと黒板を見たまま正輝に答える。



「じゃあさっきの事か。お前がキレるとか珍しいからな。怖すぎてあの子たち泣きそうになってたぞ。」



笑いながらそんなことを言う正輝。



絶対同情してないでしょ。



「あいつらいっつもグチグチうるさいんだもん。ちょっと言い返しただけ。正輝こそ遠くから見て楽しんでたじゃん。」



私も笑いながら返す。