佳苗と会った翌日。
二限が体育の授業だから、少し遅れ学食に着く。
すでに四人は食べ始めていた。
いつも通り、広也の隣に座る。
すると、斜め向かいに座っていた水野がヨーグルトを差し出してきた。
「何だ?」
「昨日誕生日だったんだって?今、広君から聞いてびっくりしたよ。おめでとう」
で、ヨーグルトか。
「ずいぶん安いプレゼントだが、ありがたく受け取っておく」
こういう些細なことでも嬉しく思えるのだから不思議だ。
たかが、ヨーグルト一つで。
俺って、意外と単純な男だな。
「言ってくれれば、もっとまともなプレゼント用意したのに。今までの迷惑料も兼ねて」
唇を突き出し、水野は言った。
誕生日を教えなかったことに気分を害したみたいだ。
「ということは、お前は一人で寂しく過ごしたわけか」
広也はおおげさに俺を哀れんだ。
「いや、夕飯はうまいもの食べた」
しかも仁のおごりだ。
あの金の出所は仁だと佳苗は言った。
佳苗が楽しめるならと、俺との夕食代を出してくれたと言っていた。
はにかんだ様子で話す佳苗は、その仁の心遣いだけでおなかがいっぱいのようだった。
俺はそんなのでおなかは膨れなかったから、たくさん注文した。
佳苗は俺の食欲に驚きながら、
『仁と言い俊君と言い、そんなに食べて良く体型維持できてるね』
と、感心した様子だった。
「うまいものって、どこかに行ったのか?」
「ああ。昨日は前々から一緒に飯を食う約束をしてたんだ」
箸で豆腐を掬い口に放り込む。
腹が減っているのに容赦なく質問が浴びせられる。
だが、俺の才能か会話をしつつ、どんどん皿の中身は減っていく。
「誕生日に?友達か何か?」
上原はいささか驚いたように聞いてきた。
別に誕生日だろうが何だろうが俺には関係ない。
どうして、こうも誕生日を一大イベントと捉えるのだろうか。
不思議な現象だ。