「眉間に皺が寄ってるわよ。あんたも厄介なのに惚れたわね」
向かい合って座っていた上原はスプーンをまわしながら言った。
大学で水野と昼食が取れるのは週二日。
一日は五人で。
もう一日は二人きり。
大学で水野と会えるのはこの昼休みだけだから非常に貴重だ。
そして、月曜日は水野抜きの四人での昼飯。
水野は必修が入っていないから月曜日は休みにした。
俺も午前で終わるが、安いから学食で食って帰る。
必然的に月曜はこの四人になるわけだ。
「お前には関係ない話だ」
からかいのネタにされる前にけん制する。
「告白したのに、小春の態度があれじゃ、さすがの榊田も落ち込むか」
食べ終わった皿に上原はスプーンを投げ出した。
「水野が話したのか?」
俺は幾分低い声で尋ねた。
「まぁね。でも動揺してて、相談するためだったんだから責めるんじゃないわよ」
「動揺ね」
反芻しながら、しらけた気分になる。
「小春ちゃんが意識してる証拠だ。落ち込むな。ほれ、ブロッコリーやるから元気出せ」
俺の皿に、広也は手際よくブロッコリーを入れていく。
「落ち込んでない。っていうか、てめぇが嫌いなだけだろ。ふざけんな」
「何でもないように振舞ってるだけで、相当意識してるぞ。俺と遊んでるのに俊のことばっかり気にしてた」
そういえば、昨日二人で映画を観に行ったとか言ってたな。
なるほど、わざと何でもない振りをしていたわけか。
これは良い兆候だ。
仕方がないから、ブロッコリーは食べてやった。
「とにかく、お前ら邪魔すんなよ」
鋭く睨みつける。
「あら?心外ね。これでもあんたの淡い初恋を応援してるのに」
上原は肩をすくめた。
「私、実は前から気になってたんだけど」
瀬戸は内緒話をするように、でも目をキラキラと輝かせて俺へと身を乗り出す。
「小春ちゃんと出会ってすぐに好きになったでしょ?もしかして、一目惚れだったのかな、って」