妹の美玖が余計なことをペラペラ話したせいに決まっている。
姉貴にしたってわざわざ、東京から戻ってきて、後輩から仕入れた俺の噂をペラペラ話した。
姉貴の通っていた高校は俺の高校の近くにあった。
そして、人望がある姉貴の情報網は凄かった。
とにかく。
まさしく四面楚歌。
噂を否定しようとも、多少の真実が含まれているから劣勢に立たされた。
しかし、諦めれば東京行きはなくなり、こっちの滑り止めの大学に通うことになる。
別に東京にそこまで行きたいわけではないが一人暮らしはしたい。
とにかく必死に説得した。
親父たちも、せっかく東京の名門に受かったのだからと、しぶしぶ了承した。
しかし、東京でも同じことをしたら強制送還になると脅された。
お目付け役は、姉貴だ。
姉貴はすでに社会人だ、そう俺に目を配れない。
だが、鼻が利く。
気をつけるに越したことはない。
こうして、大学では大人しくした。
高校時代だって、そう遊んでいたわけじゃないが。
女を始終絶やさないでいるやつらの神経は俺にはわからなかったぐらいだ。
そして、大学に入学してすぐに水野と出会い。
こいつなら、付き合っても良いかもと思った。
ちゃんとしたお付き合いなら文句はあるまい。
そう思ったが、
水野には仁がいた。
好意を持ってはいたが、そこまで本気なわけではなかった。
少し面白くなかっただけで。
だから、この時は、別の候補を探さないと。
ああ、面倒くさい。
そう思っていた。
この時はある意味幸せだった。