あまり褒められたやり方だが、今がチャンスだ。
拠りどころを失った水野には慰め役が必要。
俺が水野を支えれば、そのうち絆されて惚れてくれるだろう。
汚いと言われようが構わない。
手段なんて選ばない。
どうしても手に入れたい。
大学もはじまり、俺たちは二年になった。
あいかわらずの日々。
一年の時より必修が減り時間割が組みやすくなったから、水野といる時間を作ろうと、こっそり空き時間を合わせたりもした。
そして、新学期の慌しさも落ち着いてきた頃、俺は水野に気持ちを伝えた。
道場の帰り道。
水野といる時間は長かったが、二人きりになるチャンスはこの時しかなかった。
汗だくの中、告白とは如何なものかと一瞬だけ躊躇ったが、まぁ、良いか。
そんな結論がすぐに出た。
「好きだ。俺と付き合って欲しい」
すでに日が落ちた道を二人で歩いていた。
話が一端、途切れた時。
前触れもなく、水野に言った。
人生初の告白は、緊張は少しはした。
だが言葉はすんなり出てきたし、口調も変わらずだったから上出来だ。
声が上擦ったりしたら恥をかくところだった。
水野は、俺を訝しげに見た。
眉を寄せ、新手の冗談を疑っているような顔。
あまりにも俺の態度がいつもと変わらなかったのと、雰囲気もへったくれもなかったからだろう。
そう判断を下し、もう一度繰り返した。