仁と佳苗は去って行った。
水野は別れる間際まで仁に笑いかけ、そして上手くいくか一番そわそわしていた。
二人がいなくなったら泣き出すかと思いきや。
「私、昨日寝てないの。だから寝るね」
ふわわと大きな欠伸をした。
「寝てないって、仁はしっかり寝てたぞ。一体何時に帰って来たんだ?」
「四時少し過ぎかな?寝たら仁くんに朝食作ってあげられないから起きてたの」
それだけ言うと、目をこすり自室へ引きこもった。
四時?
一体どこで何をしていたのか。
仁に聞くのは癪だった、水野は聞いてもにこやかに微笑むばかり。
まさか一夜の恋とか、そんなことないよな?
とにかく気になった。
「まぁ。さすが仁君って言ったところね。壁は大きいでしょ?」
「おばさんは本当に底意地の悪い人ですね」
ふふふ、と妖艶に笑った。
「あら、私は俊君の味方よ」
「おばさんを敵にはまわしたくないですね。どう味方になってくれるんです?」
そうは言っても、まったく期待していない。
おばさんは傍観して、時折引っ掻き回すのが好きなのはわかる。
「何か聞いておきたいことがあるなら今のうちよ」
「なら一つ。あいつらは昨夜何をしてたと思います?」
「そうね、小春を見る限り、すっきりした印象よね」
「昨日までの陰気なオーラが一転しましたね」
それが仁という存在の大きさを示す。
「加えて、小春は身体の節々が痛いようだった」
それは気づかなかった。
おいおい。
まさか本当に一夜の恋か?
「で、何なんですか?」
おばさんの目は悪戯に輝いていた。
「俊君の想像する通りかしらね?」
「おばさん。答えになっていません」
「ここまでよ。私だって本当のことわからないし。仁君に聞いても教えてくれなかったもの」
おばさんはわざとらしく、しょんぼりして見せた。
おもちゃを取られた子供のように。
「でも、おばさんは見当がついてるんでしょ?」
俺をからかって遊んでる。
絶対に。