「お前が行ったところでどうにもならない」



 仁は俺を一瞥しながら言い放った。


 そんなことはわかっている。


 だけど、反論したくなる。



「そんなことわからないだろ?」



「ここは仁に。仁が諸悪の根源なんですから」



 佳苗が俺を宥めにかかった。


 ここには、仁の味方しかいない。


 俺が譲るしかないのか。


 どいつもこいつも仁が行くべきだと思っている。


 俺だって頭ではわかってる。


 でも割り切れないものがある。


「先に寝てて良いですから」



 胡散臭い笑みを浮かべ仁が、障子を開けたところで、



「小春さんと別れた場所聞かなくて良いの?」



 佳苗が問いかけに仁は振り返った。



「馬鹿言うな。聞かなくたって俺は小春を見つけられる。どこにいても」



 口元を吊り上げて笑う。


 その顔は得意げだ。


 佳苗は呆れたように笑った。



「愚問だったね。健闘を祈ってるわ」



 仁はひらひら、と手袋をした手を振って出ていった。