やはり大学とバイト先が同じで、俺たちの共通の友人である広也や上原、瀬戸。
特に広也と上原だが。
あいつらがからかうのを何だと思っていたのか。
ただの冗談として捉えていたんだろうが。
「愛されているね~」
そうからかわれても水野は。
「いや~そうかな?」
えへへ。
と冗談を返していた。
その水野の態度が、より周りの人間に俺たちが付き合っていると思い込ませていった。
まったく俺のことを意識していないから、平気な顔してそんな冗談を言う。
腹が立った。
だから俺は何も言わなかった。
気づいた水野が否定しようとするのも止めた。
「女が鬱陶しいから」
そんな風に言って、納得させた。
嘘でも恋人だと思われていたほうが水野に余計な虫はつかない。
このお惚け娘は、かなりあからさまな好意にしか気づかないから。
親切なふりをして、あわよくばという下心丸出しにはまったく気づかないから危なっかしい。
そういう俺も、この位置にいれば、いつかチャンスがくるかもと思惑があったわけだが。
だが、その思惑は外れた。
水野にとっての仁という存在がどれほどなのか正確に把握をしていなかったのだ。