「限度があります。おばさんのやっていることはどん底にいるのにさらに地面をドリルで掘って水野を落としたようなものです」



「それは底じゃなかったのよ」



 つーんとそっぽを向いた。



「おばさん」


 俺は再度、睨みつける。



「はいはい。俊君が小春のこと大好きなことが良くわかったわ。余計、憎いわ。ああ言うタイプに本当に男は弱いわよね」



 がちゃんという音が辺りに響いた。



「何!?それは本当か!?小春は渡さんぞ!!」



 おじさんがテーブルから身を乗り出していた。


 おじさんの俺を睨みつける視線は無視をした。


 おばさんは本当に掴めない人だ。



「話を混ぜ返さないでください」



「私が掘った穴をさらに掘ったのは仁君よ。私を責めるのはお門違い」



 しらっと責任を転嫁した。


 だが、それは本当のことだ。


 仁もそれがわかり、ぐっと喉を詰まらす。


 四対の目が仁に注がれる。


 言い訳できやしない。


 おばさんが口を開いた。



「仁君。今回の件は小春だけが悪いとは言えないわ」



「小春は何も悪くありません。俺の態度が小春を傷つけた」



 仁もおばさんには頭が上がらないらしい。


 もっと言ってやれと、心の中でおばさんにエールを送る。



「そうよ。前から、あなたには忠告していたわよね?覚えてる?『小春に構い過ぎないで』って」



「そうは言いますけど、理由教えてくれなかったじゃないですか。『甘やかすのは良くない』とか言って!」



 仁はおばさんに楯突いた。


 俺に楯突くな、とか言っておきながら。


 実に無謀な行為だ。