「水野を騙して、からかって楽しんでたのか?水野がどれだけ傷つくかわかっていながら」
何故、気のある振りをしたのかが知りたかった。
「小春を故意に傷つけるわけないだろ。お前には何もできやしないんだから口出しするな」
目を手で覆いながら、仁はうなだれた。
「自分だって何にもできてないくせに偉そうなこと言ってんな。そもそもお前が蒔いた種だ。俺がどうにかできるわけないだろ」
こんな性悪のどこが良いんだかさっぱりわからない。
というか、水野が話している仁と同一人物か?
仁が俺を睨みつけ、口を開いたところで、
「おい!仁!帰ってるのか!?」
おじさんが帰ってきた。
玄関口で叫んで、障子を壊しかねない勢いで居間に入ってきた。
「おかえりなさい。おじさん」
笑顔で仁は言った。
なるほど。
俺に対してだけ態度が違うらしい。
初対面で何でこうも敵意を持たれるのかがさっぱりわからない。
おじさんは仁の頭を叩いた。
でかした。
おじさん。
心の中で拍手喝采。
いや、実際に拍手をした。