何だかわからないが水野の家に泊まることとなり、気の向くまま、車に乗った。
おばさんは道中、始終質問をしてくる。
そんなことを聞いて、何が楽しいのかわからないが、ずいぶん嬉しそうだ。
俺はその質問にしっかり答え、水野は俺たちをじっと観察していた。
しかし、さほど時間が経たないうちに、水野は後部座席で眠りはじめた。
泣き疲れたのかもしれない。
目の辺りが腫れている。
「小春が迷惑かけてるんじゃない?」
水野を眺めていた俺に、おばさんが話しかけてきた。
さっきまでの浮かれた声ではなかった。
俺は微笑みながら言った。
「普段はしっかりしてますよ。ただ、幼馴染のことになると周りが見えていませんけど」
「仁君のこと知ってるの?」
おばさんは意外だと言うように、目を見開いた。
「会ったことはありませんけど、水野から良く話を聞いています」
「まったく。本当に鈍感な子ね。俊君に話すなんて、酷なことして。ごめんなさいね」
やっぱり、食えない人だ。
水野の母親とは思えないほど鋭い。
「勘違いしないでください。水野とは親しくさせてもらってますけど友人です」
一応、しらばっくれてみる。
「そうでしょうとも。小春には仁君がいるもの。恋人だなんて言われたらこのまま雪壁に突っ込んじゃうわ」
さらりとおばさんは言った。
「……おばさん。初対面なのに、結構言いますね」
とりあえず、笑みだけは浮かべた。