俺を好きになってくれれば、絶対幸せにしてみせる。


 悲しませたりしない。


 ずっと笑っていられるように傍で守ってやれる。


 それが俺にはできる。


 仁が俺と水野の間に立ちはだかっていた。


 だから手をこまねいていた。


 その障壁がなくなった。


 弱ってる水野に優しく近づけば、それで望むものが手に入る。


 そんな風に思っていた。


 だけど、それは全て俺の思い込みでしかなかった。














 母親が駅まで迎えに来るということで待つことになった。


 互いに何も話さず、ゆったりとした時間が流れる。


 水野の故郷は本当に田舎で、それが俺にはとても心地良い場所だった。


 そして、一人の女性が待合室へと入って来て俺たちへ目も向ける。


 水野の母親を見た瞬間、似てないな。


 そう思った。


 水野の母親は綺麗だった。


 若い頃はさぞモテただろう。


 水野はというと、綺麗というよりは可愛い。


 しかも十人並み。


 鈍感タイプの水野に対して。


 水野の母親、以下、おばさんは姉貴と通じるものがある。


 つまりは鋭く、厄介なタイプだ。


 これは要注意人物だ。


 本能がそう告げた。


 そして、それは正しかった。