仁を想う水野を見ていて不愉快だったけど、そういう水野が好きなのだ。
だけど、そのまっすぐさやひた向きさを少しは曲げて俺を見て欲しかった。
少しくらいチャンスを与えて欲しかった。
水野を傷つけた仁が許せない。
だけど。
その一方で。
これでチャンスは巡ってくる。
水野が何もかもを失って泣いている姿を見て喜んでいる。
仁が結婚すれば、間違いなく俺が次に名乗りを上げられる。
一番良い位置にいる。
その位置をキープしてきた。
傷ついている水野を励ますふりをしながら、自分のものにできる。
そんなことを考えている自分に反吐が出る。
水野と俺は違う。
こいつのように真っ向勝負なんてしない。
状況を見極めて、ここだという時を待つ。
そのほうが労力が少なくて済むし、成功率だって高い。
水野のような馬鹿なことはしない。
だからこそ、こいつに憧れるし、たまらなく好きなんだ。
だから、どんな手を使ってもどうしても手に入れたい。
もう、水野の言うように。
仁とはどうにもならないんだ。
好きでも諦めるしかない。
もう仁は結婚するんだ。
それならば簡単だ。
俺が救ってやれば良い。
汚いかもしれない。
周りには恋人だと思わせて水野に近づけないように睨みをきかせて。
仁に振られて傷ついている水野を打算で励まそうとしているのだから。
でも、それが一番手っ取り早いし、水野のように傷つくこともない。
それに。
俺なら水野をこんな風にさせたりしない。