「正義感じゃないの。昔、いじめられてて、いつも私を助けてくれた人がいたの」
弾んだ声だった。
「ヒーローみたいにすぐに駆けつけてくれて。私もね。そういうのやってみたくて」
カラスが馬鹿にしたように鳴く。
「ヒーローごっこか。まるっきしお前はガキだな」
「ヒーローに誰でも憧れるものでしょ?まぁ。私のヒーローみたいに、私は格好良くないけど」
それから、水野は。
「私のヒーロ-ーはすっごく強くて格好良くて、優しくて、頭が良くて……とにかく」
指を折り、水野のヒーローの素晴らしさを羅列する。
「すごく素敵なの!」
そんな水野の顔を見て。
面白くないと感じた。
計らずしも、この日、五月末日は俺の十九回目の誕生日だった。
そんな日に最悪なことに気づいた。
俺は、水野に好意を持っているということに気づいた。
ほんの少しだけだが。
こんなのに少しでも惹かれているなんてあり得ない。
最悪な誕生日だった。