翌朝。
広也の予言通り、水野が俺に話しかけてきた。
というより、頭を下げられた。
ほっとしたが、広也の言葉に動かされたのは気に食わなかったから無視した。
俺が浮上のきっかけを作ってやりたかったのに、広也に奪われたんだ。
面白くない。
自分でも子供じみているとは思ったが、気に食わないんだから仕方がない。
「せっかくのチャンスを不意にするなんて、榊田君らしくないじゃない?」
ロビーのソファーに腰をかけていると、瀬戸が背後から話しかけてきた。
「うるさい」
振り向きもせずに言うと、瀬戸が隣に座った。
「機嫌が悪いのは広也君が原因?」
水野みたいな鈍感も困るが、瀬戸みたいな鋭いやつは厄介だ。
似たようなふわふわタイプなのに、どうしてここまで違うのか。
足して二で割るのが丁度良い。
瀬戸は何も言わないのを肯定と受け取り続けた。
「何でもそつなくこなすのに小春ちゃんに対しては空回りばっかりだね」
「お前。まだ、プリンの恨みがあるのか?」
瀬戸は意味深に微笑んだ。
「榊田君って、さりげなく小春ちゃんを特別扱いしてポイント集めてるはずなのに、当の本人には伝わってないし」
やっぱりプリンに違いない。