「あ~それは平気だ。まったく興味持ってないから」



「あ?」



「お前って相当、高校の時遊んでたんだな。ぞっこんなんて言ってもまるっきし信じてくれなかった」



 だから、それは噂だ。


 付き合った女の数なんて、両手と片足で足りるはずだ。


 それも長くても三ヶ月。


 最短で三日。


 その日だけの関係というなら、他にいたが正確には覚えていない。



「『俊は友達思いな友人を持って幸せだ。小春には申し訳ないが俊も一人の女と付き合うこと学んだほうが良い』とか言って、一人で納得して帰って行った」



「その話は本当か?」



 訝しげに広也を見る。



「ああ。小春ちゃんがお前にぞっこんで、俊も女遊びを控えないとマズいから需要と供給がぴったりで、付き合ってることになってる。明美さんの中では」



「思い込みの激しい姉貴で助かった」



 最悪な事態は免れた。



「何度も『違います。俊がぞっこんなんです』って言っても『本当に広也は友達思いだ』って、目を細めて笑うんだ」



 広也はお手上げだった、と手を上げてため息を吐く。



「広也。お前は喋り過ぎだ。何が、ぞっこんだ。勝手なこと言いやがって」



 俺の言い分は綺麗に無視された。



「なんか前々から俊の一方通行感があったけど、俺の直感は正しかったわけだ」



 腕を組み、うんうん頷く。



「最終通告だ。死にたくなければ黙れ」



 俺は睨んだが、逆に広也は嫌な笑みを浮かべた。


 さっきまで縮み上がっていたくせに。



「はいはい。で、明日、小春ちゃんは実家に帰るけど、お前はどうすんだ?」



「……水野を送って行く。あいつは馬鹿だから。仕方なくな」



「送って行けるのも、俺のおかげなんだからな。まぁ。健闘を祈る」



 広也はわざとらしく敬礼をした。


 にかっ、と白い歯を見せて。


 こいつと水野が妙に仲が良い理由がわかった。


 二人とも馬鹿だからだ。


 そうに決まっている。