「お前、俺を売ったのか?」



 再度、鋭く睨みつけると広也はぶんぶん首を横に振った。



「まさか!お前の不利益なることは何も!」



「うちの姉貴は鼻が利く。嘘はバレる」



「嘘は言ってない!お前には小春ちゃんという可愛い彼女がいて、ぞっこんだとしか言ってない!断じて。嘘じゃないだろ?」



「…………」



「しまった!!俊の片思いだった!どうしよう!?嘘吐いたことになるのか?これは?」



「…………」



「いや、今まで知らなかったんだ。平気だよな?殺されないよな?いや、明美さんに殺されるなら本望かも」



 広也は締りのない顔した。


 デレデレして気色悪いやつめ。



「安心しろ。姉貴の前に、俺が殺してやるから」



 バッキと、手の骨を鳴らすと広也の顔は蒼白になった。



「ま、待て!どうしてだ!?小春ちゃんのことを明美さんに話したのがマズかったのか?」



「当たり前だろ!姉貴が水野に興味持つに決まってる」



 水野と姉貴が会ったら、一貫の終わりだ。


 そして水野のことは家族に伝わり、野次馬のお袋と美玖が押しかけて……


 考えただけでぞっとする。


 加えて、姉貴は平然と水野に俺の過去をバラすに違いない。


 悪意がないから始末に終えないのだ。


 ただの噂だ。


 ほとんどがデマだ。


 だが、噂を水野が信じたら……


 考えただけでぞっとする。