「礼を求めてるなら、お門違いだ」



「別に。俊に礼を言われても蕁麻疹になるだけだし。お前が、哀れに思えたから仲を取り持ってやったんだ」



「……哀れで悪かったな」



 広也から顔を背ける。



「OLから人妻まで年上キラーとして名を馳せた俊が、片思いしてるんだ。親友としては応援してやらないと!」



「どうして知ってる?」



「あ?小春ちゃんは別に好きな人がいるんだろ?お前が小春ちゃんを好きな……」



 察しが悪い。


 広也の言葉を遮る。



「違う。俺の噂だ。瀬戸はそんな話はしなかった」



 瀬戸の話に人妻の噂はなかった。



「明美さんが教えてくれた。まさか、本当に人妻とも?」



 明美?



「明美って、うちの姉貴か?」



「そう。お前、相当な遊び人だったみたいだな。人妻とは恐れ入る」



 広也は肩をすくめて見せた。



「そんな面倒くさいのと誰が付き合うか。噂をいちいち真に受けるな。一体、どういうことだ?」



「お前の素行調査のため、俺に会いに来たんだ。しかし、さすがは俊の姉ちゃんだな。すげぇ~美人!」



 顔だけはな。


 心の中で呟く。


 性別を間違えて生まれてきたとしか思えないほど男勝りだ。


 男以上に女にモテるのだから。


 それより、広也と姉貴が繋がっていたとは。


 今はこいつの裏切り行為について問いただすほうが先だ。