師範の目が届かなくて、自分が近くにいたっていうのならまだわかる。
しかし、近くに大人がいても水野が駆けつける。
だから、ガキが喧嘩してもいつの間にか水野任せになっていた。
ガキから、
「お節介ババァは引っ込んでろ!」
そう毎回言われ、憤慨しながらも、懲りずに仲裁に入る。
ガキの言う通りだ。
俺も心の中で同調した。
本当にお節介だ。
喧嘩に敗れたやつをいつもあやしてて、こいつは何をしに道場に通っているのかと呆れた。
だから、帰り道。
「ガキの仲裁は師範の役目だ。生徒のお前が何で、毎回いの一番に行くんだ。そういうのありがた迷惑だぞ」
水野は俺を睨みつけた。
もうこの頃にはかなり親しくなっていたから遠慮がない。
「正義感振り回して、鬱陶しい」
俺も遠慮なく言う。
さらに機嫌が悪くなるかと思ったら、水野は苦笑した。