部屋に戻ると、一目散に広也がかけて来た。
「小春ちゃんは?」
「目は覚ました」
これだけ、みんなが心配しているのにあいつは気づかない。
本当の意味では理解していない。
とりあえずは、死人ではなくなった。
この旅行に意味はあった。
だが、気分は晴れない。
晴れる訳がない。
水野が見せた、憎しみを宿した瞳が頭から離れない。
俺に向けられていた憎しみが。
広也がまだ何か言っているが、知ったことか。
上原か瀬戸にでも聞けば良い。
話したくない。
「仁、仁って何の宗教だ!!救いようのない馬鹿だな、あいつは!勝手に仁を想いながら、くたばりやがれ!!」
苛立ち紛れに毒をついて、布団を被った。
広也の声はいつの間にかしなくなっていた。
もう次の日は最悪だった。
怒りで眠れやしなかった。
コンディション最悪だ。
そんなでスキーなんてする気も起きなく、部屋で不貞寝だ。
三人はいそいそ出掛けていった。
水野のことは任せたと。
朝食の時に広也と上原に殴られた両頬が見事に腫れていた。
タオルで冷やしがら畳に寝転ぶ。
あんなやつは、死にたければほっとけば良いんだ。