どうして周りを見ない?


 どれだけ俺たちが心配していたのか、まるでわかっていない。


 俺が怒っている理由さえわからないようだ。


 こっちこそ、買い被りだった。


 こいつは本当に身勝手なやつだ。


 仁のことしか見えていない。


 それで良いと思っている。


 俺は怒鳴りつけたが、水野はうんざりした顔をしているだけ。


 もう笑うしかない。


 こいつは、救いようもない。


 俺は侮蔑する目を自然と水野に向けた。



「お前さ。本当に身勝手でガキだな。だからだよ。仁に子供扱いされるのは。お前みたいなのが相手にされるわけねぇな」



 何も意識しないで言った。


 皮肉交じりに。


 だが、それまで冷ややかさだけを纏っていた水野に異変が起きた。


 顔を強張らせた。


 そして、次の瞬間には俺への敵意で満ちていた。


 泣きながら怒鳴り散らした。


 あまりの剣幕に少し驚く。


 それ以上に、水野の目にははっきりと色が戻った。


 そのことに驚いた。


 燃えるような瞳で俺を睨みつける。


 それは俺に対する憎悪だった。


 憎しみを映し出していた。


 だが、怒ることに疲れたのか。


 途端に弱弱しくなる。


 感情の起伏をコントロールできずにいる。


 水野は頭を抱えて、蹲った。


 俺の心は冷めていった。