ひたすら走った。
心臓が大きく音を立てている。
どこにいる?
辺りに目を配りながら、ひたすら走る。
走る。
走る。
幸いそう遠くまで行っていなかったから、すぐに見つけることができた。
だが、一瞬立ち尽くした。
雪の中で、水野が倒れていたのだから。
急いで駆け寄り、抱き起こす。
頬を叩いて呼びかけても返事はしない。
唸り声をあげるだけ。
本当の死人のように身体が冷たい。
頭は混乱状態だったか、冷静な対応はできた。
こういう性質で助かった。
とにかく水野を抱き上げて、走った。
命に関わらないだろうが、一刻も早く温めないとマズい。
玄関にたどり着くと、三人があっけに取られ俺と水野を見た。
「おい!ぼっさとしてるな!早く部屋に布団引け!」
そう怒鳴り声を上げると、肩をピクリと上げ、わたわた慌て出した。
とりあえず、水野を着替えさせる間は廊下で待った。
かなり身体が冷えている。
熱を出してもおかしくない。
髪をがしがし掻きながら悪態をつく。
あれは具合が悪くなって倒れたんじゃない。
確実に。
水野の意思だ。
何で、こんなことになる?
ここに連れてきたことが裏目に出たのか?
仁とまた痴話喧嘩したぐらいにしか思っていなかった。
だが、違う。
こんな馬鹿なまねをしたんだ。
だから違う。
無理やりにでも聞き出しておくべきだった。
もう抑えられないほどの怒りが身体中を蠢いている。
どうして、仁のために命まで捨てようとするんだ?
だから崇拝すんな。
そう言ったのに。
仁しか見てないから、こんなずたぼろになるんだ。
仁に対しても。
水野に対しても。
そして水野の異変を正確に認識していなかった自分自身に対しても。
怒りが渦巻き、抑えられない。