そんなこんなで、七月末日。
佳苗と会おうことになった。
合コンの後、すぐに佳苗の予想通りになったことが何ともバツが悪くて、連絡をするのを躊躇っていたが、いつまでもそのままにはしていられないから、一ヶ月後に連絡した。
しかし、会うのがこんなに遅くなったのは佳苗となかなか連絡がつかなかったからだ。
そして、いつも通り居酒屋で待ち合わせ、連絡がなかなか取れなかった理由を聞いた。
「あのね。妊娠したみたいなの。もうすぐ、四ヶ月」
何とも気の抜ける声でとんでもないことを言われ、俺はさしみをうっかり酒の中に落としてしまった。
佳苗をいつも通り送り届け、夜道を歩く。
目出度いことだ。
仁も双方の親も大喜びだろう。
結婚しているわけだし、何の問題もない。
祝福するべき出来事だ。
本来ならそうなのだが、問題がある。
それは、水野だ。
これが深刻な問題だ。
あいつの行動は俺には予想できない。
何を言うのか、何をするのか、考えるだけで背筋に悪寒が走る。
もう、挙式の時のような惨めさを味わいたくない。
俺なんか、眼中にないような扱いをされたくない。
あの劈くような泣き方が、未だに耳にこびりついている。
でも、またそんな出来事が起こりそうな事案だ。
このことを水野に俺から伝えるべきか。
それとも仁が言うまで待つべきか。
仁から聞かされた時の水野を考える。
平気な顔して喜んで見せながらも、心の中では盛大に傷つくのだろう。
とすると、やはり俺から伝えるべきかとため息を吐く。
穏やかな日々は二ヶ月もしないうちに終わったのだ。
やっぱり、仁が気に食わない。
きっとこれは、水野の中の仁を認めても、どうしようもないことなのだ。
これから、どうなるのか、先が見えない。
冬の到来か?
少なくても、春の到来ではなさそうだ。
俺の春はいつ来るのだろうか?
水野と出会い、三年四ヶ月。
俺の苦労はまだまだ続く。
ああ、俺に幸あれ。
水野にとって、仁は神と書く。
だからこそ俺にとって、仁は神は神でも疫病神。
そんなのが取り付いているのだから、やはり来年はお祓いをしなければ。
そんなことを考えながら夏の夜道を歩いていても、水野のへらへらした笑顔が思い浮かぶのだから本当にどうしようもない。
俺は立ち止まり大きくため息を吐いた。
春よ来い。
早く来い。
【完】