「おい。俊。どうした?水野さんと、また何かあったのか?」



 黒澤が訝しげに聞いてくる。



「また、自棄を起こしたのか?結局、付け回すんだから発言撤回しておけ」



 安住は呆れ顔。



「そうだぞ。ゼミの活動はともかく、下心がある男が小春ちゃんと二人で出掛けたら、あの無防備さは命取り」



 広也はしたり顔で頷く。



「俺はあいつの交友関係に口出すほど、心の狭い男じゃねぇよ」



 その言葉に、四人は聞いてはいけないことを聞いてしまったかのように、俺から気まずそうに目を背けた。



「い、いや……榊田って、顔に似合わず、そんな冗談も言うんだな。友達になれそうだ。あはは……」



 水野と同じゼミの男は口元を引きつらせながら笑った。



「い、いや、なかなか寒い冗談だった」



「う、うん、意外と自分のことって分からないもんだよな」



「し、俊って、意外とボケてるところあるしな」



 三馬鹿も同じように口元を引きつらせ笑う。



「……お前らの言い分は良くわかった。ここで心が狭い俺は、お前らを半殺しにすれば良いんだな?」



 その言葉に四人は一斉にぶんぶん首を横に振った。


 そしてこれ以降、俺の心の広さは広まり、俺に許可を取る輩はいなくなった。