「もう少し、って。それは期待して良いのか?」
結局、自分から尋ねて、急かしてしまう。
しばらく、沈黙が続く。
それは長くも、短くも感じた。
心臓の音がやけに大きく聞こえる。
テレビの音がかき消されるくらい。
「……好きだから。榊田君のこと、好きだから」
好き?
俺がいつも水野に伝える言葉で、俺が水野に言われるのは、はじめてだ。
予期せぬ言葉に、息をすることすら忘れる。
そんな俺には気づかず、水野は続けた。
「他の女の人のところにいって欲しくない。写真の人と何でもないって聞いて、すごくほっとしたの」
長い髪が、顔にかかり表情が見えないが、耳が真っ赤だ。
抱きしめて、キスしたいぐらい可愛い。
それはいつものことだが、勢い余って押し倒してしまいそうなぐらい可愛い。
布団と枕がちょうど俺たちの間にあるし。
「でも、やっぱり仁くんが好きで。良くわからないの。だから、もう少しって言っても時間がかかるかも。結局、このままかもしれないし。勝手なことばかり言ってるけど、これが本心」
おいおい。
まさか、こんな急展開があるとは。
もう一生報われないかもと思ったら、この展開。
好き、って水野に言われただけで、このままの関係で終わっても構わない気がした。
もちろん、それはごめん被りたい。
とにかく、俺の気持ちが迷惑ではないわけだ。
重荷ではあるかもしれないけど。
俺にできることは負担に思わせないことだ。
「とにかく、待つ。一生でも待つ」
あ、これが重荷になる発言だ。
失敗だ。
重荷にならず、気の利いたセリフ?
それは何だ?
俺にはさっぱりだ。
でも、水野は頬を染め、嬉しそうに頷く。
一生分のマイナスイオンを一気に補給した。