そんなことをぐだぐだ考えている間も、水野はトイレに駆け込む。


 俺を枕代わりにしてから、トイレに駆け込んだ回数は二回。


 計四回で、とりあえず落ち着き、深い眠りについた。


 俺はさんま定食を平らげ、ソファーにもたれる。


 足を動かさないように、そっと。


 顔にかかる長い髪をどかしてやる。


 お前が勝手に擦り寄ってきたんだ。


 これはいかがわしいことに入らない。


 それを良いことに、頬と髪を手持ち無沙汰に撫でる。


 と、水野が俺の手をがっしり両手で握って、口元に寄せた。


 唸り声はなく、心地良い寝息だ。



「……お前は甘えたがりだな」



 話しかけてみるが、返事はない。


 ここにいたのが広也でも同じことをしたのだろうか?


 俺だという認識があるのだろうか?


 酒に酔って、誰構わず甘えるのだろうか?


 甘えるのが俺に対してだけならば良いのにと、やっぱりため息を吐いた。


 こうやって甘えてくれることが結局嬉しいのだ、俺は。













 零時を過ぎたところで、タクシーを呼んだ。


 こんなところで寝ていたら風邪を引く。


 さっきから身震いしているのだから、ちゃんとした布団で寝かせてやりたい。


 先に会計を済ませ、タクシーが到着してから、水野を抱きあげた。



「重い……」


 思わずそんな言葉が漏れたとしても、水野は寝ているから平気だ。



 ……しかし、本当に重い。