「それでも、好きなんだろ?自棄を起こすのはそれだけ好きな証拠さ。お前の罪はグラマー美女だけで済んでる。それを何をしてでも許してもらえ」



 本当に惚れたが負け。


 あんなのに惚れた俺が悪いわけか。


 諦められない俺が。



「隠せば良い話だろ。正直に話したところで何の得にもならない」



 上着の埃を叩く。



「嘘を吐くだけマイナスだ。ばっちり出てくるとこで撮られてるんだぞ?」



 眉間に人差し指を当て、広也は唸った。



「中で何してたかなんて、当の本人しかわからない。何もしていない、で押し通せば疑惑止まりだ」



 あいつが真実を知ったら、今の米粒みたいな可能性も消えてしまう。


 そんな可能性だってないかもしれない。


 結婚式の時も、飲み会の時も、水野にとって俺は気にかける存在ですらないと突きつけられたようなものだ。


 それでも、可能性を信じて、ありえない嘘でも突き通すしかない。



「小春ちゃん、お前を信頼してるのに騙すのかよ?」



「今回だけだ。もう懲りた。俺は水野と違って学習能力がある。同じマネは二度としない」



「真実を言えば楽になるものを。ま、お前が楽になるだけで、小春ちゃんは傷つくだけか。なら、嘘を吐き通せ。どんな疑惑の眼差しを向けられてもな」



「言われなくてもそうする。お前は戻れ」



「はいはい。俺は里香ちゃんでも慰めるか!あの人と賭けしなくて良かったな。数時間で決着がついた」



「うっさい」



 手を振って追い払う。



「うるさいついでに、もう一つ。小春ちゃん、あの写真気にしてると思うぞ。今日は授業中、上の空だったらしい。いつも必死にノートを取ってる小春ちゃんが一行も取ってなかったって、朔が言ってた」



「円満に別れたことにする方法でも考えてただけじゃねぇのか?あの腐った脳みそで考えそうなことだ」



 どれだけ残酷なことかも知らずに、余計なおせっかいを焼くのがあいつだ。


 本当におせっかいでうんざりする。


 それでも、そういうところが好きだと思うのだからどうしようもない。



「そうかもな。でも、そうじゃないかもしれない。何事もプラス思考だぞ!」



 米粒ぐらいの可能性はあると信じて、その可能性に賭けて見よう。


 水野のことが諦められない俺には、それしか選択肢がないのだ。