合コン相手の女たちより、早くに着いた。
なるほど、レベルが高い女を迎えるにあたってそれなりの場所を選んだようだ。
俺の会費はタダ。
三人が俺の飯代を払うことで、帰ろうとした俺を思い留まらせた。
雰囲気だけじゃない、どいつがこの店を選んだか知らないが、こいつらが外すとは思えない。
料理も酒も期待できる。
女が来たことで、三人はさっと席を立ち、笑顔を向けた。
席に座る女にさらりと目を通す。
安住の目は節穴だと思ったが、しっかり綺麗どころを集めたらしい。
昨日、酒を飲んだのに、今日も飲みたくなる。
それは、忘れたいことがあるからなのだろう。
どんどん飲み、どんどん食べた。
いつの間にか、席は入れ替わり俺の隣には一番の綺麗どころのワンピースの女がいた。
女はしきりに話しかけてきた、俺は適当に相槌を打つ。
俺の手にそっと置かれた綺麗にネイルが施された手も退けることはしない。
「たくさん食べるんだね。今度私の、手料理も食べて欲しいな」
不愉快ではないぐらいに高い声でワンピース女は言った。
こいつは男馴れしてるとすぐにわかった。
どうすれば、好感を持たれるかを良くわかってる。
話をしても頭の良さは窺えるし、引き際も心得ている。
だから追い払うことはしなかった。
付き合うなら、こういう女だ。
遊ばれるのはプライドは許さないっていうタイプだが、付き合えば適度に尽くしてくれるだろうし、見た目も悪くない。
今まで振り回されていただけに、この女と話しているのは心地良かった。
が、少し離れたカウンター席に目をやった瞬間、心地良さが吹き飛んだ。
酸欠で倒れるかと思うほどの、眩暈に襲われる。
水野がにこやかに男と座る姿が目に入ったのだ。