水野に何か言ってきたやつがいてもおかしくない。
あいつは何とか一人で解決しようとするやつだ、いちいち俺に協力を求めたりしない。
俺のせいで、水野が傷つくことだけは防がなければ。
見覚えのある三人が見え、人を押しのけて、ようやくたどり着く。
水野の姿が見えない。
「プレイボーイの榊田サン、ご機嫌麗しゅう」
「女たらしの榊田サン、ご機嫌麗しゅう」
「高校時代に逆戻りの榊田サン、ご機嫌麗しゅう」
俺が目に入った瞬間、三人はにこやかに微笑んだ。
瀬戸までこういう悪乗りをするとは、俺の味方がいなくなったということだ。
「……水野は?」
「小春ちゃん?今日は友達の引越しの手伝いとかでもう帰ったのよ」
さらりと言う瀬戸に青筋が立つ。
騙されたわけか、人の良心につけ込みやがって。
回れ右をして退散しようとしたところで、
「まぁ。ゆっくりお茶でも。陽が延びたんだから、ゆっくりと」
広也と上原に肩をがっしり掴まれた。