俺は苛立っていた。
それはバイト先に気に食わないやつがいるからだ。
橘なんとか、っていう男が気に食わない。
一つ下の他大学の二年。
それ以外でこいつに関する情報と言えば、水野に惚れているということだけだ。
水野には俺という恋人がいることは周知の事実。
この塾で一年働いている橘も言わずもがなで知っている。
だから、水野にちょっかいをかけることはしなかった。
それは俺を敵にまわすということだから。
過去形なのは、最近この橘は、水野にちょっかいを出し始めたからだ。
水野は後輩が慕ってくれていると勘違いし、二人で良く出掛けたりしている。
それを知っているのは俺の目の前で誘うからだ。
別に、水野のことなんてどうでもいいから構わない。
だが、橘の勝ち誇ったような笑みが気に食わない。
俺と水野が別れたという噂は聞かない、普通に話しているから当然だ。
それなのに水野にちょっかいをかけ、俺に挑戦的な視線を送る橘が不気味で、苛立つのだ。