苛立ちを紛らわせるように煙草を灰皿に強く押し付ける。
「俺は姉貴に言っても構わないぞ」
冷ややかに見やると、女はさらに笑みを深めた。
「それ脅しのつもり?なら、私はみずのちゃんに、あなたの身代わりで俊君に抱かれたって言っちゃおうかな。どんな反応するのかな?」
そんなことを言いながら、煙草を銜えたままシャワー室へと消えていった。
何やってんだろ、俺。
ベッドに寝転び、髪を掻きあげた。
天井には安っぽいライトが爛々と輝いていて、俺のため息を誘った。
安っぽいホテルに安っぽい女といる俺も、十分安っぽい人間なのだろう。
でも、あいつは違う。
あいつだけは絶対に違う。
もう好きでも何でもないけど、そんなことを思う。
こんなことを考える俺は、本当にどうかしている。
ホテルを出ると、別れ際、再び女は首に巻きつき、耳に唇を寄せてきた。
香水の香りに混じって、微かな煙草の香り。
俺の服にはこれ以上の臭いが付いてしまっているのだろう。
昨日、あれだけ吸ったのだから。
「また遊んでね」
そう妖艶に微笑み、ヒールを颯爽と履きこなし消えていった。
俺も大学だ、早いところ帰って準備しないと。
今日は小テストがあるからサボれない。
そして、女と一緒にホテルを出るなんていう愚かな行為が、後に災いを呼んだ。