挙式以降、水野と連絡を取ることはしなくなった。
もう一緒に過ごす理由がなくなったからだ。
うまい飯が食えないのは残念だが、一人で本を読んだり、高校や大学のやつらと飲みに行ったりと気ままに過ごした。
水野からも連絡はない。
いつも誘うのは俺からだったから、当たり前と言えば当たり前。
あいつにしても、仕方なく俺に付き合っていた節があるだろうから、お互いにとって良いことだった。
大学がはじまり、俺たちは三年になった。
三年になると、時間割が決まった必修がなくなりかなり自由になるし、授業も減る。
その余った時間を水野と過ごすために使うはずだったが、それもなくなり心にゆとりが持てる。
水野のことを嫌いになったとは言っても、友人として距離をもって接するには問題がないやつだ。
五人でつるんできたのに、いまさらあからさまに態度を変えるわけにもいかない。
二人きりで会うことはしなくなったが、昼飯を一緒に食えば話すし、最初の頃に戻っただけ。
広也たちが不思議そうに尋ねてきたから、
「あんな女こっちから願い下げだ」
と言ったら、より微妙な顔をされた。
「あんなに熱心だったのに、一体どうしたの?」
悪いものを食べたのか、というような顔で上原は俺を見た。
「目が覚めただけだ。あれは、女どうこうじゃなくて人として間違ってる。だから、距離を置くことにした」
それ以外は話さなかった。
水野は相変わらずへらへら笑い、過ごしている。
今まで、あんなに笑顔が好きだったのに、ドキドキしていたのに、今は何も感じない。
一瞬で好きにもなれるし、一瞬で嫌いにもなれるものなのだな、と改めて思う。