とにかく。
打つ手なしで、手をこまねいていた。
このままでは仁と付き合ってしまうのではとヒヤヒヤした。
だがお盆以降、仁とは上手くいっていないことを水野から聞き出した。
敵の情報を仕入れるのには苦労しない。
これだけは、ありがたいことだ。
しかし、両思いはほぼ確実。
時間の問題だ。
結局、自覚する前と変らずに。
俺は仁の話を聞き、友人として過ごした。
「榊田君とは波長が合うから、なんか一緒にいる機会が多いよね」
そんなことをいつだったか、水野は言った。
確かに波長が合う。
その言葉がしっくりくる。
気が合うではなく。
むしろ、気が合うというなら。
上原や瀬戸と合っている。
広也は置いといて。
上原はスポーツ、瀬戸は本を話題にできるが、水野の場合はこれといった話題はなし。
無趣味というか、水野の趣味は仁へと続く道の追求だ。
そんな変な趣味を持つ、水野に何で俺が。
一日一度は同じことを思った。
呪いとしか思えない。
祟りだ。
せめて上原か瀬戸みたいなのを好きになっていたらと何度も思った。
気が合うし、上手くいくだろう。
こんな無神経、鈍感、不可解、仁馬鹿な女より、よっぽど魅力的だ。
何が、「仁くんが『小春は魅力的だ』って言ってくれたの!」だ。
仁め。
魅力的の意味をしっかり辞書で調べてから使え!
そうして何もできずに、夏は終わり、秋もあっという間に過ぎ、冬を迎えた。
そして。
この冬は、俺たちにとって考え方の変わる特別な季節となった。