想像通り、平日でもひどい混みようだ。
何で、アトラクションに乗るのに一時間以上待つのか。
乗ってる時間と言えばごくわずか。
遊園地に来たのなんて、小学生の頃以来だった。
「上半身裸が代名詞だったのに、今はしっかり服着てるんだな」
ちらりと、人に囲まれている着ぐるみを一瞥した。
「上半身裸だったりしても違和感ないのが不思議だよね。人間じゃないからかな?」
水野は首を傾げた。
「人間だったら変態だ。しかし、冬なのに半袖はおかしいだろ。この法則でいくと夏になると元通りだったりしてな」
「あ~確かに。鋭い推察だわ」
水野は顎に手を当て頷き、俺の意見に感心しているようだ。
「……二人とも、キャラの服装を熱く語らないでよ。ほら!今度はこれに乗ろう」
美玖は手招きした。
二人とも着ぐるみにも昼のパレードにも興味を見せずに、ひたすら食い物とジェットコースターに目を輝かせていた。
いや、しかしこんなに食い物がうまいんだな。
あちらこちらの売店で俺はひたすら食い物を買い込む。
金の心配ならいらない。
何故なら姉貴が三人分のチケット代に加え、一万円札を二枚くれたからだ。
『いいか。お前が払うんだぞ。スマートに。決して、出し惜しみするな』
姉貴は俺に金を握らせながら、念を押した。
俺は食い物には出し惜しみしない、あっ、あれもうまそうだ。
「お兄ちゃん、さっきから自分ばっかり!」
「何だ、食いたいのがあるなら早く言え」
俺はポケットから財布を取り出し手渡した。
「小春ちゃん、買いに行こう」
「俺の分も買って来いよ」
二人は駆け出して行ったのを見送り、俺はアトラクションの最後尾に並んだ。
水野の心配通り、一人になると話しかけられた。
こんなところでナンパするやつもいるんだな。
これだけ人が多いんだ、変わり者ぐらいいても不思議はないか。