国枝は甘い卵焼きを作ってきた料理上手な女であり、俺が一番長く付き合った女でもある。


 とは言っても三ヶ月だが。


 こいつは俺の教訓になった女だ、だから良くも悪くも忘れられない。


 料理上手だし、顔もスタイルも悪くなかったから付き合ってみた。


 最初のうちは、うまい弁当が食えてラッキーだ、くらいにしか思っていなかった。


 しかし、国枝は本気で俺が好きだったのだ、それが大問題だった。


 俺は当然国枝のことなんて何とも思っていない。


 だから、待ち合わせてもすっぽかすか、良くて遅刻。


 とにかく、俺はいつものごとく勝手に振舞った。


 国枝はそれに対して何にも言わなかった。


 文句を言ったら切り捨てられるのがわかっていたからだろう。


 俺は二ヶ月もしないうちに、その従順さに嫌気がさした。


 というか、本気で自分のことを好きな女と付き合うことが、鬱陶しいものだと気づいた。


 あの恋する視線が鬱陶しい。


 だから、切り捨てた。


 鬱陶しいから、もう来るな、と。


 それで終わりだった、いつもなら。


 しかし、国枝は従順で尽くす女を演じたかったのか。


 私のどこが良くなかった?


 至らなくて、ごめんなさい。


 改めるから、考え直してと。


 俺に縋りついた。


 国枝にとって、俺が始めて付き合った男だったことも相まって、毎日俺のクラスまで押しかけてきた。


 さすがの俺も、根を上げた。