「榊田君は優しい!」



 そんなことを水野は言い続けて、ニヤニヤと俺が笑われていた。


 この無神経で鈍感な女をどうにかして欲しい。


 上原や広也に対してだけでなく、俺の悪口を大声でまくし立てた女。


 確か、その女があまりにしつこくて、何かを言ったような気がする。


 それで怒り狂い、学食という人が多く集まる場所で、俺を罵倒した。


 うるさいと耳を塞いでいたら、水野が負けじと大きな声で俺を弁護した。



「榊田君はデリカシーがないだけで、優しい人です!嘘を言うのは良くありません。一発殴って許してあげてください」



 はい。


 と俺の身柄をその女に渡した。


 で、結局俺は一発殴られて、その女は憤然と立ち去った。


 広也たちは俺の顔を見て大笑いし。


 水野は、うんうんと頷き、満足げだった。


 良いことをしたぞ、みたいな顔をしていた。


 明らかな勘違いだ。


 むしろ、はた迷惑だ。


 どうしてこんな、わけのわからん女を好きなのか不思議で仕方がなかった。


 どう考えても不可解だ。


 理屈ではないらしい。