「おせっかいかもしれないけど……でも、妹さんの好意を無為にするようなことしないで。優しいのに、美玖ちゃんにまで誤解されちゃうのは悲しいよ」



 美玖は黙って、成り行きを見守る体勢に入った。


 ここで折れたら、水野を使って俺に色んな要求を突きつけてくるのは目に見えている。



「こいつにどう思われようと構わない。余計なお世話だ」



「私が良くないの!普段あんなに優しいのに、どうしてそうやって悪ぶって、突き放すの?兄妹なんだから、仲良くしてよ」



 悲しげな声色に、うっかり水野の顔を見てしまったのが運の尽きだ。


 こいつの笑顔にも弱いが、また逆の意味で、こういうしょんぼりした顔にも弱い。


 こんな偽善的な発言で自分の発言を覆すなんて、馬鹿のすることだ。


 そう思いつつも、俺は発言を覆してしまうのだ。


 こうも簡単に。


 またまた降参を示すように大きく息を吐いた。



「……わかった。付き合えば良いんだろ」



 もうヤケクソだ。


 水野が、花咲くように笑う。


 やっぱり、榊田君は優しい、なんて言いながら。


 本当に俺は馬鹿だな。


 どうしようもない馬鹿だ。


 それでも、マイナスイオンを感じたい。











「さすがは小春ちゃん。お兄ちゃんの説得が上手!ところで、月曜日は平気?遊園地行こうよ」



 今度はこれだ、こいつの要求には際限がない。


 首を絞めて、揺さぶりたい衝動に駆られる。


 水野は真面目な学生だから授業はサボらないが、運の悪いことに後期も月曜日は休みだった。


 だが、その真面目さが美玖がサボることも良しとしなかった。


 しかし、遊園地に一緒に行ってくれたら家に戻る、と美玖が言ったら、それなら、と結局笑顔で頷いていた。


 何もかもが、美玖の思い通りに運んだ。