何だか、水野がやけに楽しそうだ。
しかし、この佳苗の自信。
なんか、恐ろしく感じた。
そして、その直感は正しかった。
形成はあっという間に佳苗に傾むき、さっきまでのリードなんて、木っ端微塵。
俺と仁は唖然とした。
俺が投了すると、
「佳苗さん、すごい!格好良い!!」
手を叩いて、飛び跳ね、水野は大興奮。
それに気を良くした佳苗は、えへへ、と笑った。
「碁だけは得意なんですよ」
「良いな~私じゃ、二人に敵うものなんて何もないんですもん」
そこまで褒められて、佳苗は、首が壊れるほど振って謙遜した。
「そんな!小春さんは料理も何でもできるじゃないですか!」
「二人ともはもっと要領良く、さらっと上手くやるんですもん。本当に嫌味だわ」
水野は子供っぽく、頬を膨らませた。
「小春のほうが料理は上手い。それに小春は超絶に可愛いが、こいつは超絶に可愛くない。こいつなんか小春の足元にも及ばないさ」
仁は顎をしゃくって、俺を指した。
「性格の悪さは仁が上だけどな。佳苗。無駄なDVD買うより、性悪が治る体操を見つけてこいよ。俺も少しぐらい金を出してやる」
仁より早く、佳苗が反応した。
「無駄じゃない!そうですよね?小春さん」
同性なら味方になってくれるだろうと、水野に話を振った。
水野は申し訳なさそうに肩をすくめた。
「ごめんなさい。私も体操にはダイエット効果しかないように思います」
佳苗が手ひどい裏切りに、情けない声をあげた。
だが……
「水野。そう言ってるわりに対局中、ちらちらDVDを見てたよな?」
ぎくりと、肩を強張らせた。
「そ、それは多少は気になるというか……あっ!もうご飯炊けるわ。テーブル片付けてね」
ぽん、と手を叩いてキッチンに逃げて行った。
信じないとか言ってたくせに、良くわからないやつだ。
実際、水野には要らない代物なのにな。
もちろん、言わない。
セクハラなんて騒ぎ出すことが予想できる。
俺は賢いんだ。