嫌なことを言われても、顔には出さない。


 自分の中に押し込める。


 そういうやつだと、わかっていたが。


 俺に対しては違うと思っていた。


 俺には言い返してくると。


 それなのに今、俺が傷つけても平気な顔をする。


 何事もなかったかのように。


 気にしてない振りをする。


 俺を責めたりしない。


 喧嘩になると思った。


 だが、他のやつらと同じように扱われた。


 これじゃ、本当に俺は水野を傷つけただけに過ぎない。


 線を引かれている。


 確実に。


 こんな風に扱われたくなかった。


 取り返しのつかないことを言ってしまった。


 俺がこの場にいなくなっても、広也たちの前で平然と過ごすんだ。


 傷ついているくせに。


 仁には話すのだろうか?


 仁には泣き言を言うのかもしれない。


 俺には線を引き、仁には心を許す。


 俺の存在はこいつにとって、どんなものなのだろう?


 特別に思ってくれていると思ったのは勘違いなのだろうか?


 他のやつらと変わらない?


















「朔ちゃん。そろそろ行こう」



 水野は席を立った。


 こいつらの学部は学食から離れているから、いつも一足早い。


 水野がにこやかに、またね、とトレイを持って行こうとした。


 今、謝らないと。