当時オレはピアノを習っていて、もうすぐコンクールがあった。


しかしこの日は事前に母親の友達が自宅に泊まると言われ、ピアノ教室も無い日だったから、学校のピアノで練習して帰ろう…と音楽室の扉を開く。


――――ガラッ


「えっ?」


「へっ?」


誰もいないんだろうなぁーーー…と思っていたのに先客がいて、オレは瞬きを繰り返した。


「えっ、えっと、あの……」


オレの目的のピアノの近くにイスを置き、何やら大きな本みたいなものを持っていたのは、男の子。


その男の子はオレと目が合うと、慌てた様にイスから立ち上がる。