風花がさっきからしつこく繰り返す「マロン先生」とは、
栗原先生の”栗”からとって英語に変換しただけで、
わざわざつっこむ必要もない。


「まだ21なんだって!あたし狙っちゃおーかなぁ~♡」


なぜか浮かれまくりの親友に、
「実は隣に引っ越してきたんだ。」なんて、言えるわけもない。


「へぇ~・・・若いんだね。」
「髪もそこまで派手ともいかない茶髪だし、
 なのにスーツしっくりくるし、もーとにかく全部が程良いってゆーか、あれで数学できます なんてゆっちゃうんだから反則だよね。」


顎に手をあてながらウンウンと納得する風花。


「風花のミーハーぶりにはたまにほんとに呆れるよ・・・」
「あたしがミーハーなんじゃなくって、いとが無関心すぎるんだってー!!」


どっちもどっちだと思う。

確かに、あたしは同級生の男子への興味が皆無だ。
(年上には興味があるというわけでもないが。)

それは、いわゆる思春期真っただ中に父親を失ったことも少しは影響してると思う。


それに、今回の場合、
まさか隣人が「先生」ときちゃったものだから、
興味すら風船みたくしぼんでしまった。

かわりに、
お隣さんが自分の教師で、
これからいやでも顔を合わせることになることへの不安がふくらんで憂鬱。


「いと可愛いんだから、それ自覚すればすごい武器になるのになぁ~」