「いと〜!いつまで寝てるの!!」

ボロアパートに響くお母さんの声は、
ご近所さんの間でも有名。


「んぁー・・・」


お決まりの生返事で、
しぶしぶベットから下りる。

朝ごはんの目玉焼きの
ふんわりした匂いが鼻をかすめた。


「まったく。高2にもなってお母さんに 起こしてもらうなんて〜」


と、愚痴をこぼすお母さんを横目に、
歯磨きをして眠気を覚ます。

早坂いと。
どこにでもいる、ごく普通の17歳。

制服に袖をとおして、
女子にしては短時間で準備を済ませ、

ローファーの
つま先をコンコンと鳴らす。