「ふーん…」

 「成高は?
 もうまとまったの?」

 「まだ。」

 「え?
 じゃあしなよ。」

 「その前に…聞いて欲しい事があってさ。」


 そう言って、成高は壁から背中を離して立ち直した。


 「聞いて欲しいこと?
 あたしに?」

 「うん。」

 「何?」

 「…恋愛はさ、俺は、行動を起こした奴の勝ちだと思ってる。」

 「…え?…」

 「その時どんなに自信がなくても、不安でも、頑張れば、努力すれば、絶対返って来るから。
 それだけ。」

 
 それだけ言うと、成高は部屋に入って行った。

 あたしの中には、どうしていきなりあんな事を言い出したのか、あたしと十夜の事を知っているのか、と幾つかの疑問で埋め尽くされていた。

 だけど、どう考えても最後に行き着くのは…



 もしかして、応援してくれた…?

 行動を起こせって、頑張れってこと?



 そう思うと、なんだか妙に納得できてしまって、他の事を考えたせいか、さっきまであった緊張が解けていることに気が付いた。


 
 あたしは高成が入って行ったドアを見て、

 
 「ありがと。」


 そう言うと、また歩き出した。

 十夜の部屋はここから見える程近い。

 だからあたしはすぐにドアの前に立って、また速くなりだした胸を押さえて、震える手でノックした。