朝、いつもより早く目が覚めた。

 携帯で時間を見ると4時過ぎ。

 携帯を頭の横に置き、寝っ転がったまま鏡を取って顔を見た。



 …ヒドイ顔。



 目は冷やしたせいか平気だったけど、顔がむくんでいた。

 鏡をあったとこに戻してまた携帯を開いた。



 新着メールは…ない。



 問い合わせをしてみたけど、やっぱりメールも電話も着てなかった。

 霞…十夜からのメールを開く。

 十夜からのメールは2件しかない。

 登録のためと、昨日のメールだ。

 

 もう期待しながら携帯を開くことも、保護メールが増えることもないんだ。



 十夜からのメールの保護を外して削除したい。
 電話帳から十夜の名前を消したい。

 だけどできない。
 消したくない。

 
 そんな自分が情けなくて腹立たしい。

 

 あたしはタオルを握ると音を立てないように起き上がって部屋を出た。

 トイレに行って水を出して思いっきり顔を洗う。

 持ってきたタオルで顔を拭いて鏡の中の自分の顔を見る。




 『………ねぇ…あたしに触って欲しくない?
 目も合わせたくない?
 そのくらい嫌い?
 あたしの事、見たくもないくらい嫌い?』




 頭の奥から昨日のあたしの言葉が響く。

 無意識のうちに、手に力が入って洗面台の淵を握り締めた。





 『………ああ。』




 十夜の声が聞こえた気がしてあたしは出しっぱなしの水を片手で素早くすくって鏡に思いっきりかけた。



 もう、忘れるんだ。


 
 鏡の中のあたしが、歪んでいた。