「もともとこんなのゲームで、俺ら好き合ってねかったのに…やっぱゲームで付き合うなんておかしいよな。」

 
 霞があたしを見ないまま、背を向けたまま言う。


 「大体さ、俺、先生じゃん?
 生徒に手ぇ出すってやっぱ犯罪じゃん。
 免職されたくねぇし…」


 言いたい事があるのに、何も言えない。
 喉に何かが突っかかったみたいに、声が出ない。


 「お前もさ、退学になりたくねぇだろ?
 合宿の間って言っても神田先生も他の生徒もいるし…
 だからさ、このゲームもう終わりな。」



 …何で?
 何でそんな事勝手に決めちゃうの?

 どうして目を見てくれないの?
 どうしてそんな事言うの?
 自分から持ち掛けてきたくせに。
 そのスリルがいいって言ってたくせに。
 

 
 「じゃ、少ししてから来いよ。
 舞原達には適当に言っとくから。」

 
 目を見ないまま、顔を見せないまま、背を向けたまま、霞が行ってしまおうとする。

 あたしは、喉から押し出すように声を発した。


 「待って!」

 
 霞の体が大きく揺れる。

 
 「な、何で…?」


 必死に堪えようとするけど、どうしても声が震えてしまう。

 
 「…理由は…言っただろ?」

 「違う!!」


 声を出す度、涙が幾筋にもなって頬を伝う。


 「何で…こっちを見ないの?」

 「………」

 「何で背中向けるの?」

 「………」

 「何で…?」


 息を思いっきり吸う。

 だけど、震えて上手く吸えない。


 「何で…目を見てくれないの…?」

 
 滲んだ視界の中、霞の腕がピクリと一瞬だけ震えたような気がした。