霞からのメールを保護して、携帯を閉じると両手で胸の前で握ってベッドに転がった。

 興奮で激しかった心臓は、いつしか規則正しい呼吸に合わせてゆっくりになっていた。



 真っ暗な中、あたしを呼ぶ声が聞こえた。

 何度も呼ぶ、その声がすごく心地よかった。

 なんだか落ち着いて、また深いところに意識を飛ばそうとした。


 バッチーン!!

 
 「ふぇ!!?」


 いきなり部屋に響く鈍い音と、頭に走る激痛に、あたしは反射的に顔を上げた。


 「いつまで寝てんだ、このバカ!」

 「か、霞!?」

 
 目の前には両眉を吊り上げて、怒った様な呆れた様な微妙な顔をした霞が居た。


 「ったく。
 練習してろって言っただろ。」

 「え?待って。
 何で霞が居るの?
 いつ帰って来たの?
 っていうか、ここあたしと佳耶の部屋だよ。
 居たらヤバイんじゃないの?」

 
 あたしは腕を組んでベッドに腰掛ける霞に思いつく限りの質問を浴びせた。

 思いっきり間抜けな顔をしているであろうあたしを見て、霞は笑いながら言った。


 「さっき帰って来たんだよ。
 今は2時半。
 皆もう昼食食って休憩終わって練習中。
 舞原は大嵜と外に居て、俺は部屋に戻る途中にここに来ただけ。」

 
 
 へぇ…じゃあ佳耶と大嵜先輩いい感じなんだ。
 今2時半で霞がさっき帰って来たから、だいぶ出掛けてたんだ。

 ってか、2時半ってあたしもだいぶ寝たな。
 自分でビックリだよ。


 …って、2時半!?



 「え?
 もうそんな時間なの!?」

 「おお。
 お前昨日メチャクチャ寝てたくせに、また寝るとかな。
 寝すぎじゃね?
 脳みそ溶けるぞ。」

 「と、溶けるわけないでしょ!!」

 
 あたしは起きて髪を手グシでときながらベッドから降りた。

 
 「お腹空いた!
 何か食べよ。」


 そう言って霞の袖を引っ張ると、霞が『はいはい。』と言いながらついて来た。

 廊下に出て、ご飯を食べるとこに行くと、そこに佳耶が居た。