合宿が終わって、また学校で部活がある。

 その時、霞からのただの生徒に対する態度を受けることが怖い。

 また、明日あるであろうゲーム終了の合図を受けることが怖い。

 今のあたしは、霞とただの先生と生徒の関係に戻ることが一番怖いんだ…



 走り終わって戻ると、まだ男子と神田は話し込んでいた。

 正直、ちょっとイラッとくる。



 練習しろよ。


 
 そう思ってるけど、そんな事言えないチキンなあたし。

 
 「早く十夜帰ってこないかな…」

 「ホントだよ。」


 2人で呟き合う。

 …と

 
 「舞原。」

 「大嵜先輩!!」

 「ちょっと来て。
 道具の設置頼みたいんだけど。」
 
 「はい!」


 佳耶は好きな大嵜先輩に呼ばれて満面の笑みで行ってしまった。

 

 あの様子だと、今日はずっとにやけてるかな。



 あたしは佳耶を見送りながら、今から何をしようか考えた。

 

 1人でいても暇だし、佳耶のとこ行っても邪魔だからなぁ。



 考えた結果……サボる事にした。

 午前の練習が終わるまで、あと30分ある。

 あと30分で昼食だから、その時に戻って来る事にした。

 タオルと日焼け止めを持って、あたしは部屋に向かって歩き出した。

 

 霞がいなきゃつまんないし、練習する気も起きないよ。

 早く戻って来ないかな。


 
 そんな事を考えて、改めて『あたしって霞の事が好きなんだな』って思う。

 部屋のドアを開けると、まず鞄の近くに放っておいた携帯を開く。

 メールが1件着てて、あたしの頭は期待と霞に埋め尽くされる。

 メールを開くと、やっぱり霞だった。

 高鳴る胸を押さえて文を見ると、ほんの一言の短い文だった。


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 練習頑張れよ。

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 「…なんだ、素っ気ないの。」


 そう呟いたけど、あたしの顔は笑顔が溢れていた。