ビ、ビックリした!

 急に顔を出すなよ!!


 
 「どんだけびびってんだよ。」


 霞が笑いながら言った。


 「ほら、早く入れ。」


 そう言ってドアを大きく開けてあたしの肩を引き寄せた。

 霞の胸が目の前に迫る。

 その時、霞の香水が香った。
 
 

 霞がつけてるからかな?

 この香り、すごく落ち着く…



 後ろでキィ…とドアが閉まる音が聞こえる。

 さらに迫ってきてあたしを包む香りに心地よさを覚える。

 
 「おい、耶奈?」

 
 霞の戸惑った声に顔を上げると、霞のちょっと驚いた顔があった。


 「いやに積極的だな。」

 「え?
 わあ!!」


 霞の言葉に、あたしは霞のシャツを握り締めていることに気付き、離れた。


 「あれ、もう離れるの?」

 
 霞がニヤニヤしながら言う。



 …その顔気持ち悪いよ…


 
 あたしは必死で話題を変えようとした。

 
 「だって香水の匂いが良かったんだもん!
 何の香水使ってんの?」
 
 「香水?」

 
 霞がキョトンとした顔で言った。


 「え?
 香水、つけてるでしょ?」

 「つけてねえよ。
 香水なんか。」

 「え?
 だってなんかいい匂いするよ?」


 言いながらあたしは霞に近づいて首もとを嗅いでみた。

 …と、何かがあたしに巻きついた。


 「一つしか使ってねえよ。」

 「結局使ってんじゃん。
 っていうか離してよ!!」

 
 霞の広い腕の中で暴れる。



 あたしの心臓がもたないよ~!!


 
 「お前今日ここで寝ねぇ?」

 「え?」

 
 あたしは霞の言葉に暴れるのを止めた。



 それってそれって……そういう事だよね…?



 途端にあたしの顔が赤くなる。

 固まっていると霞が噴出した。


 「何考えてんだよ!
 なんもしねえよ。」


 あたしが疑いの眼差しで見ると霞が笑いながら更に言った。